クリニック・診療所向けの予約システムはクリニックや診療所で診察予約の際に活用されるシステムです。
これまでクリニックや診療所では予約管理の業務効率や予約受付けの際の患者の利便性の向上が課題となっていました。しかし予約システムを活用すれば、これらの課題を解決することができます。
また、クリニックや診療所は日頃から感染症対策にもっとも敏感にならざるを得ない業態です。このため予約システムは新型コロナウイルスの蔓延が契機となり、感染予防の一環として、対面による人と人との接触機会をより減らすためのツールとしても関心が高まっています。
そこでここでは、クリニック・診療所向けの予約システムの必要性や機能とともに、クリニック・診療所における予約システム導入のメリットやポイントなどについてもご紹介します。
クリニック・診療所向けの予約システムとは顧客となる患者自身が主にWeb経由などで自由に診察予約をおこなうことができるシステムをいいます。
従来型の電話や対面による予約方法では、患者がクリニックや診療所に直接電話をかけたり、通院時に次回の予約をしておかなければなりませんでした。
こうした方法では、予約は受付時間内に限られるばかりか、予約ができない患者は体調が優れないなか早い時間から来院したり、待合室で長い待ち時間を過ごさなければならないこともあります。
一方、予約システムを導入すればクリニックや診療所の受付時間に関係なくいつでも予約ができ、予約時間に来院すれば診察を受けることが可能です。
また、予約システムのなかには運営の形態や規模に応じて機能をカスタマイズできるものもあり、よりクリニックや診療所における予約業務の効率化を進めることができます。
予約システムの導入は主に予約業務の効率化がその目的となりますが、長引く新型コロナウイルス感染拡大の影響により、冒頭でも触れたように、感染症対策のひとつとしてもその重要性が増しています。
特に政府によって提示された「新しい生活様式」はこれを医療機関の受療行動にあてはめると、患者が医療機関に出向くことを避けたり、受診を先延ばしするといったマインドをつくり出すことにつながります。そしてこうした行動は結果として患者数減を招き、医業収益の減少をもたらしかねません。
そこで患者数減を未然に防ぐにはクリニックや診療所における「安心して受診できる環境づくり」が非常に重要です。
そもそも、クリニックや診療所の待合室は「密」が起こりやすい場所です。
したがって、これまでの待ち時間が長く混雑しやすい待合室の状況を抜本的に見直さなければなりません。そのためには「待たない・混まない」待合室を実現させるため、予約システムの活用が非常に有効です。
提供しているベンダーにより異なりますが、クリニック・診療所向けの予約システムに搭載されている機能としては次のようなものが挙げられます。
患者からの予約を受付ける予約システムの基本機能です。
またクリニックや診療所における予約方法には「順番予約」と「時間指定予約」があります。
このうち順番予約は、予約の先着順で基本的には受付番号の順に受診する方法です。
一方、時間指定予約は患者が希望する日時を指定する方法で、15分や30分といった時間枠を区切って、一定人数の予約を受け付けます。
このため予約システムによってはこれらを組み合わせて運用することができるものもあります。
電話自動応答機能はIVRとも呼ばれ、電話予約の場合、着信時にあらかじめ登録しておいた音声を再生し患者の問い合わせ内容を振り分けたり、予約を案内する機能です。
予約システムによっては予約確認やキャンセルのほか、クリニックや診療所までの道案内、医師の出勤スケジュールなど、問い合わせ内容によって自動音声を分岐させて回答できるものもあり、電話応対の負担を軽減します。
来院処理した患者情報を電子カルテと連携する機能です。電子カルテシステムを利用しているクリニックや診療所なら、診察当日には自動的に電子カルテが用意され、患者が受付をするとチェックインを記録することができます。
また診療報酬明細書を作成するコンピューターシステム、レセコンと自動連携し、診療報酬の金額を算出できるものもあります。
専用端末を院内に設置することで再来受付をする機能です。患者検索で患者情報を表示し、来院処理をするといった受付け業務の負担を軽減します。
「治療と治療器具」、「検査と検査室」といったように関連した項目を予約と同時に自動登録する機能です。
また単純な同時管理ではなく治療に必要な器具の滅菌時間を考慮したり、検査が伴う診療の場合のみ検査室も押さえるといった複雑なリソースを同時に処理できるシステムもあります。
患者がクレジットカード登録をしていれば予約システムの入力欄に決済金額を入力するだけで決済を完了できる機能です。リマインド機能によるキャンセル対策や事前決済にも対応します。
クリニックや診療所における予約システムの導入メリットは「患者を待たせない」というサービス向上はもちろんですが、クリニックや診療所側にとっても安定した経営に大きく役立つものが数多くあります。
予約システムの導入によりクリニックや診療所にもたらされる最大のメリットは予約やキャンセルあるいは問い合わせなどへの対応時間が減少し、受付スタッフの業務が効率化できることです。これにより患者に対してはゆとりを持った対応が可能になり、結果として患者の満足度も向上します。
また予約システムによって予約を一元的に管理すれば電話やメールなど異なる連絡手段による紙ベースでの予約管理のように抜け漏れが発生するリスクが少なく、ダブルブッキングのようなミスの軽減も可能です。
予約システムは待ち時間の可視化にも大きく貢献します。このため「待ち時間が長い」といった患者の不満を減らせることはもちろん、「後からきた患者が先に呼ばれた」といった患者同士のトラブルも減少し、患者の満足度が向上することで、再診率の向上にもつながります。
さらに24時間予約が可能な予約システムなら仕事が忙しくても患者は予約を入れやすいため、新規患者の確保も期待できます。
予約システムでは診察予定人数や待合室の状況をつぶさに把握できるためこれらを診察する医師に伝えることで、診療のペースをコントロールすることも可能です。
このため患者からの待ち時間の問い合わせに対しても正確な回答ができるようになります。
クリニックや診療所では自身の予定が変わるなどして来院できなくなっても、連絡することなく無断キャンセルをする患者が一定数存在します。
しかし、予約システムが導入されていれば予約の変更や取り消しはWeb上で簡単におこなうことができ、直接電話をする必要もないので心理的に連絡しやすくなり、無断キャンセルを減少させることが可能です。
また自動的にリマインドメールを送信できる予約システムであれば、患者が予約したことを忘れてしまうリスクも軽減できます。
ここまでのようにクリニックや診療所向けの予約システムにはさまざまな機能が搭載されています。
しかしながらシステムによってそれは全く同じではありません。
このため予約システム導入の際には、それぞれのクリニックや診療所に適しているか、そのポイントを見極めてシステムを選定する必要があります。
クリニックや診療所を受診する患者は高齢者が多い傾向にあり、予約システムを利用したWeb経由の予約は敬遠されがちです。
このためデザインはできるだけシンプルで簡単なものがよいでしょう。
また従来型の対面で予約を受付けている患者に対しては、朝早くから順番どりで並ぶよりも、予約システムを活用して予約を入れたほうが自身の負担が少ないことなども周知していくことで利用を促進できます。
予約システムの運用にあたっては、スタッフが操作の習得に時間がかからないことも大切です。
業務効率化をねらって導入する予約システムは操作が煩雑で運用方法の習得に時間がかかるのでは本末転倒になりかねません。
また、万が一運用にトラブルが発生した場合も考慮して、運用相談やサポート体制が充実しているシステムを選定することも重要です。
クリニックや診療所にはすでに電子カルテなどのシステムが運用されていることも少なくありません。ただし予約システムはこうしたシステムと連携できるものとそうでないものがあります。
仮に連携できないと予約システムの導入効果は限定的となってしまいます。このため、他のシステムとの連携が可能かを必ず事前に把握しておくとともに、連携にあたって発生する費用についても確認が必要です。
また、自院のホームページに予約画面を埋め込むなど、あらかじめ導入イメージを持っている場合には、ページのアクセス数の向上なども視野に入れ、管理や制作を委託する業者と事前に打ち合わせをしておくのもよいでしょう。
クリニック・診療所向けの予約システムの機能やメリット、そして導入する際のポイントが押さえられたら実際の導入に向け、システムの選定に取りかかりましょう。
とはいえ、クリニック・診療所向けの予約システムはその種類が豊富で選定に迷ってしまうことも少なくありません。そこでさまざな予約システムの中から特におすすめのシステムをいくつかご紹介します。
Jicoo(ジクー)は予約や日程調整を自動化する無料の予約管理システムです。
カレンダーツールを含め様々なアプリと連携をすることが可能となっているためシームレスな予約体験が可能となっています。
また、予約ページのデザインカスタマイズ、セミナー型の予約、複数人の日程調整、担当者自動割当、カレンダーの週表示などの機能を利用できます。
日程調整ツールがベースとなっているため、シンプルで簡単な予約システムとしてすぐに利用することが可能となっています。
ヨヤクルはベンダーの企業名でもあるヨヤクルは自社で開発・販売・保守をおこなっている予約システムです。
特にクリニックや診療所向けの予約システムの場合には診療科目や規模、地域性などによって必要な機能や予約方法が異なる傾向がありますが、ヨヤクルなら長年の実績で培ったノウハウと、多彩な機能を柔軟にカスタマイズすることにより、「予約」に関するさまざまな要望に対応できます。
これにより、受付対応の効率化や負担を軽減し、予約の均一化によって患者の待ち時間を短縮できるほか、新患の獲得も目指せます。
ドクターキューブは1999年から診療予約専用に開発・販売・サポートがおこなわれている予約システムです。
このため小児科・耳鼻科・眼科・内科・整形外科・皮膚科・産婦人科・精神科・歯科・接骨院など、あらゆる科目への対応と導入実績があります。
また、機能に不足があれば柔軟にカスタマイズすることができ、「順番予約」、「時間予約」「時間枠予約」といったさまざまな予約方法にも対応します。
さらにこれらは運用途中での変更にも対応しているので、より柔軟に煩雑な予約管理からスタッフを解放することが可能です。
アポクル予約は専用端末を必要とせず、インターネットに接続されたPC、スマートフォン、タブレットなどがあれば導入できる予約システムです。このため高額な専用端末を購入しなくても運用を開始できます。
また、コンテンツや会員登録が必須な予約フォームはどうしても利用者となる患者の離脱がどうしても多くなりがちですが、アポクル予約はシンプルでわかりやすい設計なので患者は24時間いつでも快適に診察予約をすることが可能です。
現在クリニックや診療所などでは小児科や皮膚科、婦人科などで導入が進む傾向があります。
これは、これらの診療科の利用者が予約システムの利用に必要となるスマートフォンをはじめとしたデバイスの扱いに慣れた若い世代が多いからです。
また、むしろこうした世代では予約システムの有無が再診するかどうかの決め手になることすらあります。
さらに今後はこうした認識が全世代で一般的になっていくことが予想され、現在予約システムを導入していないクリニックや診療所も、いずれ導入の検討をすべきときがくると考えておいたほうがよいでしょう。
予約システムを導入すると収益、業務効率化に多くのメリットがあります。どの予約システムが良いか選択にお困りの方は、普段使っているGoogleカレンダーやOutlookなどのカレンダーサービスをベースにした予約システムの導入がおすすめです。